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梅田陽子のマインドボディ便り

更新日:2015.08.10(月)

【第47話】
行き場のない感情の波は、心と心臓に向いてくる

狭心症や心筋梗塞は虚血性心疾患と呼ばれ、循環器疾患の内では頻度の多い疾患と言われています。心臓を取り巻く冠状動脈が細くなったり詰まることで起こる疾患で、生活習慣の悪化から高血圧や高脂血症から動脈硬化が進展し罹患する可能性が高まるのですが、それ以外の危険因子として疲労やストレスがあります。

長時間労働により疲労が蓄積したり、難しい仕事を担う、緊張を強いる作業が続くなどストレスの影響は大きいと考えられています。そのストレスですが、特に抑うつ状態は虚血性心疾患患者の死亡率や再発率の増加に関係していると言われており、心筋梗塞の患者のうち約45%は何らかの抑うつ状態を有しており大うつ(うつ病)に進行する可能性もあります。

この大うつ病を発症すると、再び心イベントの発症(心臓のトラブル)が起こる可能性が高まると予測されています。大きな病気になると、誰でも気持ちは落ち込むでしょう、その落ち込みが続き心の病に発展してしまわないよう、周囲も自分も対処していくことが必要になるのです。

また、「怒ったら血圧が上がる」と誰もが言うように、心疾患とパーソナリティが関係していることも分かってきました。これまでは、競争心旺盛で過敏でせっかちな「タイプA」の行動パターンを持った人のリスクが高いと言われてきましたが、現在注目されているのが「タイプD」です。このタイプは、ネガティブ感情(落ち込みやイライラなど)が高い傾向にあり、対人関係において怒りを感じた場合には、無口な傾向があるためその感情を表に出さず抑圧すると言われています。この「タイプD」のパーソナリティが、心イベントの発症要因として注目されているのです。

ここで視点を変えて着目したいのが「感情労働」です。肉体労働、頭脳労働の次の第3の労働として「感情労働(*社会学者A・R・ホッシールド)」という新しい概念がうまれています。

これは、医療職・教師・介護職など、業務を遂行するために言動を管理・指導され、何かあった場合は、本来の感情を押し殺して業務を遂行することを求められる仕事であるといわれています。感情が波打つ状況があっても、冷静に対処できるだけの受け止め側の容量があればよいのですが、キャパシティーを越えた場合は「自己の源泉を使い込む」と翻訳されている通り、精神を消耗してしまい、しいては心の病となる可能性が高くなるのです。

使命感が強くまじめで寡黙なタイプDパーソナリティの人が、感情労働職に就き、納得のいかない言動を受けた場合、その行き場のない怒りなどの感情の波は、自身の心と心臓に向いてくるのです。

「セルフケア」という言葉をもう一度受け止め、日頃から心身のケアを行うことを日常としましょう。お腹がすけば食事を摂ることと同じように、心の声に耳を傾け疲れを感じたときは、その日のうちに「心の栄養」を摂りましょう。




梅田陽子





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