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梅田陽子のマインドボディ便り

更新日:2009.09.01(火)

【第7話】
歩くライフスタイル

「Do You KYOTO?」と聞かれたらどのように答えられますか? 京都してますか?とはどういう意味なのでしょうか?

地球温暖化対策として、1997年に京都議定書が策定されました。その後、英語圏の国では 「環境問題に取り組んでいますか?」を「Do You KYOTO?」と言うようになったそうです。

それを当該国である日本人、それも京都の役所の方が海外で訪ねられたとき、その意味を 知らなかったというエピソードもあります。

京都市は「日本に京都があってよかった」と大胆なキャッチフレーズで世界中から観光客を 呼び込む日本一の観光都市です。その観光と環境が京都にとってのアイデンティティであ り、また常に取り組むべき課題でもあります。

例えば、桜と紅葉の季節には観光客が多く集まります、しかし観光地も街なかも車が溢れ、 市民や産業を巻き込んだ大渋滞が起きるという、観光を立てれば環境が立たずの、相反する 問題をかかえています。

原因は交通網や道路整備などに課題があるからで、観光客はたくさ ん来てほしい、でも乗用車・タクシー・観光バスは使わないでほしいという勝手な言い分に なってしまうため、京都市では改善の必要性に迫られています。

そこで京都は、平成21年「京都未来まちづくりプラン」を策定しました。京都市ではその中に 「歩いて楽しいまちなか戦略」「歩くまち・京都」というものがあります。

これは京都議定書 を基本とした環境政策です。脱「車社会」を目指した取組みや、新たな公共交通のネットワー クにおける駅やバスを中心とし、すべての人が安全で快適に、歩いて移動できるまちの実現を 目指しています。

具体的には、観光地の道路整備や、各公共交通間の連携により、乗り換えがスムーズになる切 符や駅づくりとか、市内に車の乗り入れを減らすため、郊外の駅に車を停めて電車に乗り換え るパークアンドライド、狭い道路には車が入りにくくする、速度制限を設けるなど、歩道・車 道を含めた道路整備など、徒歩と公共交通機関で用の足りるようなまちづくりは、全国から注 目されるすばらしい施策となっています。

都市計画局歩くまち京都推進室が配布した「京都発みんなで創る歩行者優先憲章(仮称)」の 「歩くまち総合交通戦略」の説明の中に推進する観点を「健康、環境、公共交通、子育て、景 観、観光、経済など」と上げ「健康」を筆頭に示しています。

したがってこの施策は、健康維持増進に基づいた「歩くライフスタイル」の確保であると考え られるのですが、実際には、車に過度に頼らない「公共交通優先のライフスタイル」の推奨で あり、健康づくりプランというよりは、交通まちづくりプランなのです。

京都市は、市民との「共汗(きょうかん)」により「協働」領域の拡大を図り、市民が起点の 行政運営を推進し、民間の知恵・活力を積極的に導入し、共同作業を行なうとしています。こ れは市民と公共とが一体になって自治を作り上げて行く素晴らしい方法です。

しかし、「歩くまち・京都」が交通まちづくりプランであるため、「協働」の対象に「歩くラ イフスタイル」を指導できる運動の指導者などの専門家は含まれていないのです。

「京都未来まちづくりプラン」は国からの支援が減少し、市内の財政状況は悪化している現状 を踏まえ、事業の見直しと深刻な財源不足の解消を図るために策定されました。

それにもかかわらず、京都市財政の最大問題ともいえる医療費削減を目的とした健康増進策が 十分に盛り込まれているとは言えません。

もし、ここで「別の政策として、別の局が実行済みである」となるのであれば、それこそ非効率 な縦割り行政ではないでしょうか。「歩くまち・京都」を支える運動指導の専門家を投入し、 「歩くライフスタイル」の確保を、交通戦略に並ぶ核としたプランとして示し、「歩くまち京 都」を進めることを提唱します。



梅田 陽子



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